内定取消の留意点
厚生労働省の調査によると、この数年、離職者は右肩上がりであり、完全失業者の理由を見ると、「人員整理・退職勧奨(29万人)」、「業績不振や先行き不安(13万人)」、「会社倒産・事業所閉鎖(9万人)」の順に続きます。そんな中、いわゆる「内定取消」に関するトラブルもよく聞かれます。
今回は、「内定取消」について解説いたします。
内定取消とは
1.内定の法定意義
使用者が採用内定を行い、それに対して学卒予定者等が誓約書を提出すれば、その時点で使用者の解約権が留保された労働契約が成立したものとされます。
2.内定取消が認められる場合
採用内定の取消は、取消の理由が内定当時知ることができなかったか、知ることが期待できないような事実であって、社会通念に照らして相当と認められる場合に可能とされています。
内定取消事由の例
1.提出した書類に虚偽の事実を記入した場合
2.就業開始日(新卒者の場合4月1日)までに卒業できなかった場合
3.ケガや病気等により、正常な勤務ができなくなった場合
4.内定時に想定しえなかった経済情勢の急激な悪化により人員削減の必要性が生じた場合
5.その他、社員として適当でないと認められる言動があった場合
業績悪化による内定取消
業績悪化による内定取消は、内定者側に帰責性がある場合と異なり、内定を出してからわずか数ヶ月でこれを取り消すに至ったことは企業側に帰責性があるものと評価されることから、その合理性や相当性については他の事由に比べて厳格に取扱われます。
内定取消に関するリスク
1.労働契約上の地位確認の訴訟
内定者が、内定取消の無効を主張し、就業開始予定日以降について「労働契約上の権利を有する地位」の確認を求める訴訟を提起することが考えられます。
2.金銭賠償
内定者が金銭賠償を求めることが考えられます。
判例を見てみましょう。
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ヘッドハンティングにより前企業を退職した中途採用者について、業績不振により経費削減計画が進行し、配属の予定されていた部門自体が存続しないこととなったことなどから、他の職種での採用を提案したものの、これを拒否されたため、内定を取り消した事案。裁判所は、企業経営の悪化等を理由に内定の取消をする場合の有効性の判断基準として、「整理解雇の4要件」を準用しています。それによると、企業がすでに就労している従業員を整理解雇するのではなく、採用内定者を選定して内定取消をする、という選定方法については格別不合理ではないとしたものの、内定取消前後の対応の不誠実さや内定取消による内定者の不利益を総合考慮し、内定取消を無効としています。
(東京地決H9.10.31 労判726号37項)
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中途採用内定者に対し、海外旅行情報誌の企画営業業務に従事させると信頼させて、本人に大手旅行代理店を早期退職させながら、入社直前に当該情報誌発行事業の規模縮小を理由に他業務へ配属先変更を告知し、これを了解しなかったことから内定を取り消した事案。
裁判所は、当該内定取消を違法と判断し、その態様、経過、内定取消の結果、7ヶ月半にわたり失業状態に置かれたこと、不法行為に基づく損害賠償額(慰謝料)として、転職前会社の7ヶ月半分の賃金に相当する165万円、弁護士費用として20万円を認定しています。
(東京地判H15.6.30 労判851号90項)
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内定取消は、企業にとって様々なリスクを伴う行為です。内定取消しについて慎重に検討し、内定取消の対象となった方に対して、充分な説明を行い就職先の確保に向けた支援を行うなど、誠意をある対応が求められているのではないでしょうか。















内定取消の留意点










