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2022年6月14日
育児休業中の社会保険料免除の要件について
今回は2022年10月から見直される育児休業中の社会保険料免除の要件と届出事項の変更点に焦点を当てて解説いたします。
- 要件の変更内容について
毎月の社会保険料と賞与にかかる社会保険料で異なる基準が設けられます。- 標準報酬月額の保険料免除にかかる免除基準
現行の要件に加えて、同一月内に14日以上の育児休業等を取得した場合にも保険料の免除が適用されます。
(改正後要件)
以下のいずれかを満たすこと
・月末時点で育児休業等を取得していること
・同一月内で14日以上の育児休業等を取得していること - 標準報酬月額の保険料免除にかかる免除基準
現行の要件が抜本的に変更され、改正後要件のみ認められます。
(改正後要件)
・連続して1か月超の育児休業等を取得していること
- 標準報酬月額の保険料免除にかかる免除基準
- 届出時の留意点について
免除の要件変更に伴い、届出の際に記載する内容が追加されます。- 届出の提出
保険料免除の基準に該当しない育児休業等について届出は不要です。同一月内に複数回の育児休業等を取得する場合は、その日数を合算し、保険料免除の要件に該当することとなった育児休業等の取得時にまとめて届出をすることで保険料が免除となります。 - 追加記載事項
(イ)育児休業等取得日数
育児休業等の開始年月日と終了年月日の翌日が同一月内である場合、取得日数の記載が必要です。後述の(ロ)就労予定日数は取得日数に含められませんが、休日等の労務に服さない日及び一時的・臨時的に就労した日は含めることができます。
(ロ)就労予定日数
出生時育児休業(産後パパ育休)期間中に労働者と事業主の間で事前に調整して就業を行う場合、その日数を記載します。
(ハ)育休等取得内訳
同一月内に育児休業等を複数回取得した場合、取得したそれぞれの育児休業等の期間を記載します。
- 届出の提出
短期間の育児休業等であっても、複数回取得することで同一月内14日以上の要件を満たす場合も出てくるため、取得日数の管理が重要となります。適切なタイミングで届出が行えるよう準備を進めましょう。
<厚生労働省ホームページ>
「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律による健康保険法等の改正内容の一部に関するQ&Aの送付について」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220413S0010.pdf「事業主の皆さまへ 育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されます。」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/20140327-05.files/ikujikyuugyou.menjyo.youken.kaisei.pdf - 要件の変更内容について
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2022年5月13日
企業型DC受給開始時期の拡大及び加入可能年齢の拡大について
2020年5月に成立しました年金制度改正法により、企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」という)の改正が順次行われてきました。今回は、2022年4月以降に施行された主な改正点を2点取り上げます。
- 企業型DC受給開始時期の拡大(2022年4月1日施行)
従来、企業型DCの受給開始時期は60歳から70歳の間に限られていましたが、今回の改正により、上限年齢が75歳に引き上げられました。つまり、60歳の加入者資格喪失後から75歳に達するまでの間で、受給開始時期を選択することが可能になりました。 - 企業型DC加入可能年齢の拡大(2022年5月1日施行)
従来、企業型DCは、60歳未満の厚生年金被保険者を加入者としており、規約に定めるなど一定の要件の下で、65歳に達するまで加入者とすることができました。
改正後は、それらの要件が廃止され、原則70歳未満の厚生年金被保険者であれば、加入者とすることが可能になりました。なお、規約により、従来通り加入できる年齢の上限を定めることが可能ですが、この年齢上限を60歳より低い年齢とすることは認められていません。また、企業型DCの老齢給付金をすでに裁定請求した者は、再び企業型DCに加入することはできません。したがって、60歳以上の従業員を企業型DCに加入させようとする際には、すでに裁定請求していないか確認する必要があります。
この改正により、企業型DCをより柔軟に利用できるようになることで、老後の資産形成のため、より多くの企業や個人が制度を活用することが期待されます。
<厚生労働省ホームページ>
「2020年の制度改正」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html - 企業型DC受給開始時期の拡大(2022年4月1日施行)
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2022年4月15日
くるみん認定・プラチナくるみん認定の認定基準改正について
2022年4月1日より、「くるみん認定」、「プラチナくるみん」の認定基準が改正されました。さらに、新たな認定制度もスタートしましたのでご紹介をいたします。
1.くるみん認定について
次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことで「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けることができます。これを「くるみん認定」といいます。また、「くるみん認定」を受けた企業のうち、より高い水準の取り組みを行い、一定の要件を満たした場合には「プラチナくるみん」認定を受けることができます。認定を受けた企業は、広告や名刺などの厚生労働省令で定めるものに「くるみんマーク」、「プラチナくるみんマーク」を付すことができます。2.認定基準の改正について
2022年4月より、次の通り認定基準が改正されました。
(1)くるみん認定基準
1) 男性の育児休業取得率
7%以上から10%以上へ引き上げ
2) 男性の育児休業等および育児目的休暇取得率
15%以上から20%以上へ引き上げ育児目的休暇取得率とは、男性労働者のうち、育児休業等を取得した者および企業独自の育児を目的とした休暇制度を利用した者の割合が合わせて何%であるか、という指標です。
(2)プラチナくるみん認定基準
1)男性の育児休業取得率
13%以上から30%以上へ引き上げ
2)男性の育児休業等・育児目的休暇取得率
30%以上から50%以上へ引き上げ
3)出産した女性労働者及び出産予定だったが退職した女性労働者のうち、
子の1歳時点在職者割合
55%以上から70%以上へ引き上げなお、認定基準の改正にあたり、くるみんマーク、プラチナくるみんマークのデザインも変更となりました。
3.新たな認定制度について
(1)トライくるみん制度の創設
トライくるみんの認定基準は4月改正前の基準のくるみん認定と同様で、エントリー用といえます。ただし、トライくるみん認定を受けていれば、くるみん認定を受けていなくても、直接、プラチナくるみん認定を申請することができます。(2)不妊治療と仕事との両立に関する認定制度の創設
上記3種類のくるみん認定に付加して、不妊治療と仕事の両立に取り組む企業を認定する「プラス」制度が創設となります。プラス認定の取得により、くるみんプラスマークとして、不妊治療と仕事との両立もサポートしていることも明示できるようになりました。今回の改正は主に男性の育児休業取得率の認定基準の引き上げが行われており、同じく4月以降、順次施行となる育児・介護休業法の改正の中に男性の育児休業取得の促進があることからも、今後ますます男性の育児休業取得率について注目が集まると考えられます。
くるみん認定を受けることによって「子育てサポート企業」としてPRすることができるため、優秀な人材の採用や定着が期待できます。今回の改正を機にくるみん認定を目指してみてはいかがでしょうか。
(厚生労働省「次世代法に基づく一般事業主行動計画について」)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11367.html -
2022年3月15日
在職中の年金受給の在り方の見直しについて
*解説動画はこちら2022年3月号 社会保険の適用拡大について on Vimeo
2020年5月に成立した年金制度改正法により、2022年4月から「在職中の年金受給の在り方の見直し」が適用されます。
この法改正は、少子高齢化が進み、多くの人が長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的としています。「在職中の年金受給の在り方の見直し」の改正ポイントは以下の2点です。
- 在職老齢年金制度の見直し
在職老齢年金制度とは、60歳以上で在職中の老齢厚生年金受給者を対象として、賃金と年金の合計額が一定以上になる場合には年金の支給額を調整する仕組みです。つまり、賃金が高い労働者ほど、年金が減額されることになっています。
この、年金の支給調整が行われる基準額が、今回の改正点です。現行では、60歳~64歳は月額28万円、65歳以上は月額47万円ですが、改正後は、60歳~64歳についても、65歳以上と同じく月額47万円になります。 - 在職定時改定の導入
在職定時改定とは、65歳以上で在職中の老齢厚生年金受給者を対象として、毎年1回、年金額の見直しを行うために新設された制度です。現行では、在職中に厚生年金保険料を支払っても、年金額の見直しは行われず、退職時まで年金額は更新されない仕組みでした。
改正後は、在職中でも毎年9月1日時点での実績に応じて見直しを行うこととなり、毎月負担している保険料もこれまでより早期に年金額へ反映されることになります。
以上のように、年金額の支給調整の条件緩和や在職時の年金額改定の仕組みが導入されることで、年金受給年齢以後の勤労意欲の増進に繋がることが期待されます。<日本年金機構ホームページ>
「在職老齢年金制度の見直し」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0228.files/zairou.pdf
「在職定時改定の導入」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0228.files/teijikaitei.pdf - 在職老齢年金制度の見直し
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2022年2月14日
平成29年4月以来5年ぶりの雇用保険料率の改定
*解説動画はこちら2022年2月号 雇用保険から考えるシニア人材の活用 on Vimeo
労働者にとっての失業時や休職時の予防、即ちセーフティネットの役割を果たしているのが雇用保険です。新型コロナウィルスの影響が引き続くなか、従来以上に重要な役割を果たしています。
その雇用保険の保険料率が、平成29年以来、5年ぶりに改定される内容を盛り込んだ法律案要綱が発表されました。2022年2月1日の閣議で決定され、改定は確実な状況です。詳細は、次の通りです。
- 現行
- 一般事業 9/1,000(労働者負担:3/1,000 事業主負担:6/1,000)
- 農林水産 11/1,000(労働者負担:4/1,000 事業主負担:7/1,000)
- 建設事業 12/1,000(労働者負担:4/1,000 事業主負担:8/1,000)
- 令和4年4月~
- 一般事業 9.5/1,000(労働者負担:3/1,000 事業主負担:6.5/1,000)
- 農林水産 11.5/1,000(労働者負担:4/1,000 事業主負担:7.5/1,000)
- 建設事業 12.5/1,000(労働者負担:4/1,000 事業主負担:8.5/1,000)
- 令和4年10月~
- 一般事業 13.5/1,000(労働者負担:5/1,000 事業主負担: 8.5/1,000)
- 農林水産 15.5/1,000(労働者負担:6/1,000 事業主負担: 9.5/1,000)
- 建設事業 16.5/1,000(労働者負担:6/1,000 事業主負担:10.5/1,000)
労働者負担の増加も予定されています。ただし、コロナ禍における労働者の負担に配慮し、同年度中に二段階の引き上げという特例的な措置が取られるかたちとなりました。
労働保険料の計算など、従来より誤りを引き起こしやすくなっていますので、ご注意ください。 - 現行
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2022年1月13日
令和4年4月 中小企業の職場におけるパワーハラスメント防止措置の義務化
*解説動画はこちら2022年1月号 中小企業におけるパワハラ防止措置の義務化 on Vimeo
令和2年6月1日に施行された「改正労働施策総合推進法」は、職場におけるパワーハラスメント(以下パワハラ)の防止措置を、大企業において義務化しています。中小企業は努力義務に留まっていましたが、令和4年4月1日より義務化されます。
「職場におけるパワーハラスメント」とは、職場において次の3つの要素全てを満たす行為をいいます。
(1)優越的な関係を背景とした言動
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
(3)労働者の就業環境が害されるものパワハラに該当するのかの判断は、個別事案ごとに総合的に考慮することになりますが、会社の責務として明確化された具体的な措置の内容は以下のとおりです。
- 事業主の方針等の明確化および周知・啓蒙
- 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
- 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
- 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
- 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
- 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適切に行うこと
- 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
- 再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も含む)
- 併せて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
- 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
パワハラ防止に向けた取り組みは、労使がハラスメントの定義を正しく理解することからはじまります。会社は、セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに社内体制や就業規則、対応マニュアルの整備に取り組み、万が一の際に機能する仕組みづくりを検討していく必要があります。
<厚生労働省:パワーハラスメント対策等>
特設ページ:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
事業主向けリーフレット:
https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/hourei_power_harassment_r0404ibr.pdf - 事業主の方針等の明確化および周知・啓蒙
人事労務