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2025年8月14日
育児介護休業法 10月の改正内容について
2025年10月に改正育児介護休業法が施行されます。10月の変更点は2点、「柔軟な働き方を実現するための措置」と、「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮」です。今回は、「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮」について、具体的に何をすればよいか、会社として求められる対応を解説します。
■意向確認と意向聴取の違い
現在、妊娠、出産等の申し出があった従業員に対して会社に求められているのは、育児休業制度の周知と意向確認を行うところまでですが、10月以降は新たに意向聴取と配慮を行うことが加わり、現行の法律や会社の規定の範囲で対応ができない個別の悩みについても聴取を行い、対応できる範囲内で対応することが求められます。■具体的な聴取内容
具体的な聴取内容として、下記の4点があげられています。
1)勤務時間帯(始業および終業の時刻)
2)勤務地(就業の場所)
3)両立支援制度等の利用期間
4)仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)
育児をしながら働き続けるうえで、解決すべき課題は個々で異なります。個別の意向聴取を行い、対応できるものについては柔軟に対応しましょう。■会社側に求められる配慮
聴取した意向に対して配慮は必要ですが、その内容を踏まえて検討を行った上で、対応の要否については、会社の状況に応じて判断することになります。したがって、必ずしも意向どおりに対応しなければならないものではありません。また、対応を検討する際は、育児をしながら働く従業員への配慮に加えて、業務をフォローする従業員への配慮も必要です。
個別の配慮を行う上では、職場の他のメンバーへの影響も加味しながら、対応の可否について検討を進めていくのが良いでしょう。改正内容の詳細につきましては、下記ホームページもあわせてご覧ください。<厚生労働省>
育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 -
2025年7月14日
短時間労働者の社会保険加入対象の拡大
年金制度改正法が2025年6月13日に成立し、社会保険の適用拡大や標準報酬月額の段階的引き上げ、iDeCoの加入可能年齢の引き上げなどが決まりました。今回は企業への影響が大きい短時間労働者の社会保険の加入対象拡大についてご紹介します。
■現行の短時間労働者の社会保険の加入要件について
現行の制度では、51人以上の従業員を雇用する特定適用事業所で働く短時間労働者は、以下の要件にすべて当てはまる場合には社会保険の加入対象となります。- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
- 学生ではないこと
■改正後の短時間労働者の社会保険の加入要件について
今回の改正で、短時間労働者の社会保険加入要件が見直されました。従業員数51人以上の事業所という企業規模要件は、2027年10月1日から2035年10月1日までの間に段階的に撤廃されます。
さらに、賃金要件が撤廃されます。賃金月額要件の撤廃の時期については、全国の最低賃金が1,016円以上となった時に判断されます。最低賃金が1,016円の場合、週20時間以上働くと賃金月額8.8万円以上となり、必然的に賃金要件を満たすためです。したがって、企業規模にかかわらず、週20時間以上の短時間労働者は、学生を除いて社会保険の加入対象となります。■被保険者・事業主の負担軽減支援について
改正に伴い、対象となる短時間労働者と事業主における社会保険料の負担が増大しますが、従業員数50人以下の企業を対象に保険料負担を軽減する 特例措置が3年間実施されます。対象者の要件は以下の通りです。- 社会保険適用拡大により新たに加入対象となった短時間労働者であること
- 標準報酬月額が12.6万円以下であること
原則、労使折半である保険料を事業主が多く負担することで、被保険者の負担を減らし、事業主が追加負担した保険料については、当該措置により支援されるしくみになっています。
改正内容の詳細につきましては、下記ホームページもあわせてご覧ください。
<厚生労働省>
社会保険の加入対象の拡大について -
2025年6月12日
<解説動画あり>2025年6月から職場における熱中症対策が義務化されます
近年の地球温暖化・気温上昇の影響により、職場における熱中症による死亡者数が3年連続で30人以上となるなど深刻な労働災害が続いています。この状況を踏まえ、2025年6月から改正労働安全衛生規則が施行され、企業に対し職場における「熱中症対策」が義務付けられました。今号では企業に求められる具体的な対応について解説します。
■対応が義務づけられる作業の有無を確認
熱中症対策の対象となる作業は「WBGT(暑さ指数)28度又は気温31度以上の環境下で、連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」とされています。よって、全ての企業で対応が義務づけられるものではありませんが、工事現場といった屋外作業だけではなく、営業職なども例えば気温31度以上の日に1時間以上、外回りをするような場合は対象となります。まずは自社の事業場や業務のなかに、義務化の対象となる作業があるかを確認することが必要です。■重篤化させないための対策を整備
熱中症による死亡災害の原因の多くは初期症状の放置、対応の遅れによるものです。熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、適切に対処するため、以下の対策が義務付けられています。- 報告体制の整備
熱中症の自覚症状がある労働者や熱中症が疑われる症状の労働者を見つけた人が、その旨を報告するための体制を整備すること。 - 実施手順の作成
熱中症のおそれがある労働者を発見した場合に、迅速かつ的確な判断が行えるようにするため、必要な措置の実施手順(マニュアル、フロー図など)を作成すること。 - 関係者への周知
上記1、2の報告体制や実施手順を、社内掲示板やメール、イントラネット、朝礼などを活用し、関係する労働者へ確実に周知すること。
今回の熱中症対策は企業が対策を怠った場合、6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科される、「罰則付きの義務化」となっています。熱中症は身体が暑さに慣れていない梅雨の時期から注意が必要です。厚生労働省のリーフレットなどを参考にしながら、早めに体制を整えましょう。
- 報告体制の整備
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2025年5月14日
<解説動画あり>2025年4月施行 育児時短就業給付金の概要
2025年4月から「育児時短就業給付金」が創設されました。この制度は育児中の従業員が、働き方の一つとして時短勤務制度を選択しやすくすることを目的に、時短就業前後で賃金が低下する場合に賃金額の10%相当額を支給する制度です。今回は、制度の概要と申請手続きの流れについて解説します。
■制度の概要
育児時短就業給付金の対象者は以下の2つの要件を満たす方となります。- 2歳未満の子を養育するために、1週間あたりの所定労働時間を短縮して働く雇用保険の被保険者であること。
- 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて育児時短就業を開始したこと、または育児時短就業開始日前2年間に被保険者期間が12か月あること。
※2025年4月1日以前から時短就業をしている場合は、4月1日から時短就業を開始したものとみなし、上記の要件を満たす場合は支給を受けることが可能となりますので、会社からの適切な案内が望まれます。
■申請手続きの流れとポイント
人事担当者は申請の時期を理解し、申請漏れが無いよう、スケジュール管理を行うことが重要です。申請は2か月ごと、過去2か月間の賃金情報が確定したタイミングで行います。4月から時短勤務を開始した場合は、6月が初回の申請時期となり、その後、2か月ごとに申請を行い、子の2歳誕生日の前日を含む月までが支給期間となります。<申請手続きの流れ>
【初回申請】- 育児時短就業開始時賃金の届出
[様式]雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書/所定労働時間短縮開始時賃金証明書 - 受給資格の確認、初回の支給申請
[様式]育児時短就業給付受給資格確認票/(初回)育児時短就業給付金支給申請書
【2回目以降の支給申請】
[様式]育児時短就業給付金支給申請書
※育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始した場合は、1.育児時短就業開始時賃金の届出は不要となります。育児時短就業給付は、幼い子供を持つ従業員の育児と仕事を両立するための重要な制度であり、会社にとっても人材定着につながる重要な取り組みとなります。人事担当者は適切な対応を行い、従業員が安心して制度を活用できる環境を整えることが求められます。
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2025年4月11日
<解説動画あり>出生後休業支援給付金における実務対応の注意点
2025年4月から、出生直後の対象期間中に夫婦それぞれ14日以上の育児休業を取得した場合、出生時または育児休業給付金(67%)に加え、最大28日間の出生後休業支援給付金(13%)が支給される制度が新設されました。人事担当者が実務対応で留意すべき3つの点をご紹介します。
- 新しい制度を従業員に伝える
人事担当者には、育児休業に関する様々な制度を分り易く伝えて利用を促進する、「情報提供者」「利用促進者」の役割が求められます。従業員から妊娠・出産の申し出があったとき、新設された「出生後休業支援給付金」についても説明ができるよう準備をしておきましょう。 - 対象となる期間に注意する
出生後休業支援給付金は、夫婦がそれぞれ14日以上の育児休業を取得することを支給の要件としていますが、従業員の産前産後休業後8週間以内、配偶者が子供を出生後8週間以内に取得した育児休業が対象となりますので、注意が必要です。 - 配偶者の状況を確認する
出生後休業支援給付金の手続きには、配偶者の被保険者番号や配偶者の状況に応じた各種確認書類の提出が必要となります。人事担当者は従業員に被保険者番号の確認や確認書類の提出を依頼する目的を伝えて、配偶者の状況を事前に確認、把握しておくとよいでしょう。
妊娠・出産の報告を受けた際の対応は、企業が従業員を支えようとしているスタンスを示す重要な機会となります。適切なタイミングで必要な情報提供とサポートを行うことで、働きやすい環境作りを目指しましょう。
- 新しい制度を従業員に伝える
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2025年3月14日
<解説動画あり>2025年10月1日施行 柔軟な働き方を実現するための5つの措置とは?
会社は3歳から小学校就学前の子どもを養育する従業員が柔軟な働き方を実現できるよう、次の5つの中から2つ以上の措置を選択して講じる必要があります。
今号では、柔軟な働き方を実現するための5つの措置についてご紹介します。- フレックスタイム制又は始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
労働基準法に定めるフレックスタイム制、1日の所定労働時間を変更することなく始業・終業時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度をいいます。繰り上げ・繰り下げる時間の範囲に制限はありませんが、従業員の状況(保育所等への送迎時間等)を考慮して決定することが必要です。 - テレワーク等の措置
措置を講じるにあたっては1月につき10日以上利用可能な制度とする必要があり、かつ時間単位でも利用できる内容とする必要があります。 - 短時間勤務制度の導入
3歳未満の子どもを養育する従業員への短時間勤務制度と同様に、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む制度の整備が必要となります。 - 養育両立支援休暇の付与
1年につき10日以上の日数を取得できるものであり、1日単位だけでなく、時間単位でも利用できるようにすることが義務付けられています。なお、勤務しなかった日や時間について有給とするか無給とするかは会社が決めることができるため、本制度を選択する場合は、あらかじめ取扱方法を検討の上、育児介護休業規程や給与規程に記載するようにしましょう。 - 保育施設の設置運営等
保育施設の運営等とは、会社で保育施設を設置運営するだけでなく、運営を外部に委託して会社が費用(ベビーシッターや家事支援サービスの等の費用)を負担する場合を含みます。
なお、会社が柔軟な働き方を実現するための措置を選択する際は、事前に労働者の過半数を代表する者(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合)から意見を聴取する機会を設ける必要があります(育児介護休業法第23条の3第4項)。また、当然のことながら社内規程の改定も必要となります。人事担当者は、2025年10月までに「柔軟な働き方を実現するための措置」を講じられるよう、ゆとりをもって準備をするようにしましょう。
- フレックスタイム制又は始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
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2025年2月13日
<解説動画あり>2025年4月施行 介護離職防止のための両立支援制度の措置について
高齢化が一層進む中、仕事と介護の両立支援を図ることが重要になっています。今号では2025年4月施行される改正育児介護休業法の中から、介護休業制度の改正内容をご紹介します。
- 介護離職防止のための雇用環境整備の義務化
介護休業や介護両立支援制度の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は制度に関する研修の実施や相談窓口の設置などの措置を講じなければなりません。 - 介護に直面した労働者に対する個別の周知・意向確認の義務化
事業主は介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、制度の内容や申出先などの周知、介護休業の取得や介護両立支援制度の利用の意向確認を個別に行わなければなりません。 - 介護に直面する前の早い段階での情報提供の義務化
労働者が介護に直面する前の早い段階で制度の理解を深めるため、事業主は以下の期間内に制度内容や申出先などの情報提供を行わなければなりません。
<情報提供期間>
(1)「労働者が40歳に達する日の属する年度の1年間」もしくは
(2)「労働者が40歳に達する日の翌日から1年間」のいずれか - 介護のためのテレワーク導入の努力義務化
対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが努力義務となります。 - 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
現行では「継続雇用期間6ヶ月未満の労働者」を労使協定により除外できますが、この要件が撤廃され、除外できる労働者の要件は「週の所定労働日数が2日以下」のみとなります。
2025年4月1日の施行に合わせて、人事担当者は規定の改定や従業員への周知を行えるように準備をしておきましょう。
<厚生労働省>
育児・介護休業法改正ポイントのご案内 - 介護離職防止のための雇用環境整備の義務化
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2025年1月14日
<解説動画あり>2025年4月 65歳までの雇用確保措置の完全義務化
現在、高年齢者雇用安定法により、定年年齢を65歳未満としている企業に対して、以下のいずれかの雇用確保措置を講じることが義務付けられています。
- 定年制の廃止
- 65歳までの定年引き上げ
- 希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入
これらのうち「継続雇用制度」については、労使協定の締結により雇用を継続する労働者を限定することができる経過措置が設けられていました。この経過措置は2025年3月31日をもって終了するため、2025年4月1日より、すべての企業において1~3のいずれかの措置を講ずる必要があります。なお、定年制度の変更が生じる企業におかれましては、就業規則の見直しと所轄監督署への届出が必要になりますためご留意ください。
少子高齢化が進む今日の日本社会において、高年齢労働者が知識や経験を活かして継続的に活躍できる職場環境を整えることは、労働者と企業の双方にとって重要視されています。
短時間勤務制度や週休3日制などの多様な働き方の中から労働者自身の体力や希望にあった働き方を選択できる制度を整えることは、高年齢労働者の継続的な活躍を促すにあたり大切な事項であると考えられます。
今般の雇用確保措置の完全義務化を機に、高年齢労働者の働きやすい制度導入や施設整備についても考えてみてはいかがでしょうか。